まず知っておきたい「療養泉」とは

温泉に付いている「塩化物泉」「硫黄泉」などの泉質名は、すべての温泉にあるわけではありません。泉質名が付くのは、温泉のうち特に治療の目的に使える「療養泉」だけです。環境省の鉱泉分析法指針では、療養泉を次のどちらかにあてはまるものとしています。

  • 温度:源泉から採取したときの温度が25℃以上
  • 成分:次のどれか1つが、温泉1kgあたり基準量以上含まれている
成分基準量(1kgあたり)
溶存物質(ガス性のものを除く)総量1,000mg以上
遊離二酸化炭素1,000mg以上
総鉄イオン20mg以上
水素イオン1mg以上
よう化物イオン10mg以上
総硫黄2mg以上
ラドン111Bq以上(8.25マッヘ単位以上)

泉質10種類の一覧

療養泉は含まれる成分によって分類され、施設の掲示では次の10種類の泉質名が使われます。「浴用の適応症」は、環境省が平成26年に改訂した掲示基準にもとづく内容です。

泉質どんな温泉か浴用の適応症(泉質別)
単純温泉溶けている成分が1kgあたり1,000mg未満で、25℃以上。pH8.5以上はアルカリ性単純温泉自律神経不安定症、不眠症、うつ状態
塩化物泉溶けている成分が1,000mg以上で、陰イオンの主成分が塩化物イオンきりきず、末梢循環障害、冷え性、うつ状態、皮膚乾燥症
炭酸水素塩泉溶けている成分が1,000mg以上で、陰イオンの主成分が炭酸水素イオンきりきず、末梢循環障害、冷え性、皮膚乾燥症
硫酸塩泉溶けている成分が1,000mg以上で、陰イオンの主成分が硫酸イオンきりきず、末梢循環障害、冷え性、うつ状態、皮膚乾燥症
二酸化炭素泉遊離二酸化炭素を1,000mg以上含むきりきず、末梢循環障害、冷え性、自律神経不安定症
含鉄泉総鉄イオンを20mg以上含む泉質別の浴用適応症はなし(飲用で鉄欠乏性貧血)
酸性泉水素イオンを1mg以上含むアトピー性皮膚炎、尋常性乾癬、耐糖能異常(糖尿病)、表皮化膿症
含よう素泉よう化物イオンを10mg以上含む泉質別の浴用適応症はなし(飲用で高コレステロール血症)
硫黄泉総硫黄を2mg以上含むアトピー性皮膚炎、尋常性乾癬、慢性湿疹、表皮化膿症(硫化水素型は末梢循環障害も)
放射能泉ラドンを111Bq以上含む高尿酸血症(痛風)、関節リウマチ、強直性脊椎炎など

どの療養泉にも共通する適応症として、筋肉や関節の慢性的な痛み・こわばり、冷え性、胃腸機能の低下、疲労回復、健康増進なども掲示基準に挙げられています。酸性泉と硫黄泉は、皮膚や粘膜が敏感な人や、高齢者の皮膚乾燥症には向かない(泉質別の禁忌症)とされています。

温泉分析書の泉質名の読み方

施設の掲示には「ナトリウム-塩化物泉」のような長い泉質名が書かれていることがあります。読み方のポイントは3つです。

  • 「-」の前後:多く含まれる陽イオン(ナトリウムなど)と陰イオン(塩化物など)の順に並びます。
  • 「含〇〇」:「含よう素-」「含二酸化炭素-」のように、特殊な成分を基準量以上含む場合に頭に付きます。
  • 「冷鉱泉」:泉温が25℃未満のときは「〇〇冷鉱泉」となります。

複数の泉質にあてはまる温泉は、該当するすべての泉質の適応症がそのまま当てはまります。

泉質は施設の掲示で確認できる

温泉を公共の浴用に使う施設は、温泉法で、泉質・成分・禁忌症・入浴上の注意などを施設内の見やすい場所に掲示することになっています。加水・加温・循環ろ過・消毒をしている場合も、その旨と理由の掲示が必要です。気になる泉質や「かけ流しかどうか」は、脱衣所などの掲示で確かめられます。

自分に合う泉質の選び方

  • はじめての温泉や肌が敏感な人:刺激の少ない単純温泉から。酸性泉・硫黄泉は肌への刺激が強めです。
  • 冷え性が気になる人:塩化物泉・炭酸水素塩泉・硫酸塩泉・二酸化炭素泉は、いずれも冷え性が泉質別の適応症に入っています。
  • 湯の個性を楽しみたい人:においや色に特徴が出やすい硫黄泉、鉄分で色づく含鉄泉など。

適応症はあくまで目安で、効き方には個人差があります。持病のある人や体調に不安がある人は、医師に相談してから入浴してください。各泉質のページでは、その泉質の温泉地も紹介しています。