東北地方は日本有数の温泉王国だ。厳しい冬と豊富な雪解け水が地熱と合わさり、濃厚な泉質の温泉を各地で生み出している。湯治の文化が根強く残り、「週単位で滞在する」本格的な温泉体験ができる地も多い。

乳頭温泉郷(秋田県)— 白濁の湯と一軒宿が織りなす別天地

田沢湖高原の奥、ブナ林の中に7つの宿が点在する。それぞれ独自の泉質を持ち、「鶴の湯」の白濁した硫黄泉・重曹泉混合の湯は特に有名。アクセスが不便な分、静寂と秘湯感は最高水準。「湯めぐり号」というバスが各宿を結んでおり、複数の湯を一日で楽しめる。

玉川温泉(秋田県)— 日本一の強酸性泉と岩盤浴の聖地

pH1.2という日本最強の酸性度を誇る塩酸泉が自噴する。毎分9,000リットルという豊富な湧出量は単一源泉では日本最大級。源泉は非常に刺激が強いため、加水して入浴する。岩盤浴(大噴)と呼ばれる地熱帯に敷かれたシートの上で横になる体験は独特で、がんや難病の療養に来る人もいるほど効能が認められている。

銀山温泉(山形県)— 大正浪漫と山間の静寂

銀山川の両岸に木造多層建ての旅館が立ち並ぶ景観は、東北随一の情緒を持つ。泉質は含硫黄-ナトリウム塩化物泉。宿泊者は温泉街の散策と外湯めぐりで一日を過ごすのが定番。積雪期の夜景はことさら美しく、冬の銀山温泉を目当てに訪れる旅人も多い。

鳴子温泉郷(宮城県)— 日本有数の泉質の多様性

東鳴子・鳴子・川渡・中山平・鬼首の5地区から成る温泉郷で、9種類(一説では11種類)もの泉質が湧き出す。これは日本の温泉泉質11種のうち9種を一地域で体験できるという驚異的な多様性。「吹上温泉」のような野湯(自然湧出の露天風呂)も点在し、本格的な温泉探訪ができる。

夏油温泉(岩手県)— 秘境の野湯と大自然の中の孤立感

岩手山麓の深山に位置し、冬季は雪で閉鎖される秘湯。夏季のみ開放される野天風呂群は、川岸や林の中に自然に湧き出た湯を直接利用した原始的なもの。渓流のせせらぎを聞きながら入浴する体験は、まさに「野湯の醍醐味」そのものだ。